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<Author: 杜甫>
<Title: 兵車行>
<Format: 樂府詩>
<Year: 1988>
<BookName: 唐詩三百首詳解  上卷>
<Translator: 田部井文雄>
<style: 現代文無假名>
<style2: 日本現代譯文無假名標注>
<TranslatedTitle: 兵車行>
<BookPage: 324>
<UsedPage: 1>
<Feature: 0>
<End Header>
<Poem>
車轔轔，
馬蕭蕭，
行人弓箭各在腰。
耶孃妻子走相送，
塵埃不見咸陽橋。
牽衣頓足闌道哭，
哭聲直上干雲霄。
道傍過者問行人，
行人但云點行頻。
或從十五北防河，
便至四十西營田。
去時里正與裹頭，
歸來頭白還戍邊。
邊亭流血成海水，
武皇開邊意未已。
君不聞漢家山東二百州，
千村萬落生荆杞。
縱有健婦把鋤犂，
禾生隴畝無東西。
況復秦兵耐苦戰，
被驅不異犬與雞。
長者雖有問，
役夫敢申恨。
且如今年冬，
未休關西卒。
縣官急索租，
租稅從何出？信知生男惡，
反是生女好。
生女猶是嫁比鄰，
生男埋沒隨百草。
君不見青海頭，
古來白骨無人收。
新鬼煩冤舊鬼哭，
天陰雨濕聲啾啾。
<End Poem>
<Translation>
車はがらがらと音をたてて通り、馬はひひーんと悲しげに鳴き声をあげてゆく。
出征してゆく兵士たちは、弓と矢とを、それぞれ腰につけている。父母や妻子は、走りながら見送り、土ぽこりが立ちこめて、咸陽橋も見えない。見送る人々は兵士たちの衣服を引っぱり、足を踏み鳴らして嘆き、道をさえぎって泣きさけぶ。その泣き声は、まっすぐに立ちのぼって、大空を突き刺さんばかりだ。

道ばたを通りかかった者が、出征兵士に問いかけると、兵士はただ答えていう、「微兵がしきりなのです」と。ある者は十五歳から、北方の黄河地方の防備に召集され、その四十歳になるまでも、西方の辺境にも屯田兵となっている身の上であった。初めに出征した時には、村長が兵士のために 成人を祝って頭を包んでくれたのであったが、帰って来ると、その頭はもう白くなっているのに、またもや国境地帯の守備に行かねばならぬ。

国境地帯では、戦場に旅された血が、海の水のようになっているというのに、漢の武帝にもたとえられる玄宗皇帝の国境を拡張しようとする御意志は、まだやもうとはしない。諸君もごぞんじでしょう。漢にたとえられるこの唐の国家の、東の半分の約二百州においては、千や万を数える多くの村々のすべてに、
畑に雑木・雑草の類が生い茂ってしまっているということを。たとい、すきくわを手にとるけなげな選女がいたとしても、田畑の作物は、手入れが行き届かないままに列をすらなさないありさま。その上に、まして秦出身の兵士は、苦しい戦いにも耐える、強兵であるというので、なおさらのことに、追い立てられて酷使されることはまるで、犬やにわとりと変わるところがない。

「あなたさまのおたずねであっても、兵士であるわたしは、どうして恨みの心を十分にはらすことができましょう。そればかりではなく、今年の冬などは、まだ、この関西地方からの徴兵が中止もされないのに、おかみの役人は、あわただしく租税を取り立てようとする。いったい、租税の穀物など、どのようにして出せましょうか。ほんとうによくわかりました。男の子を生むのは悪く、かえって女の子を生むことこそよいということが。女を生めば、まだ、隣近所に嫁にやることもできるが、男を生んだら、地中に埋められて、多くの雑草とともどもに朽ち果てるだけなのです」と。

諸君よ、まあごらんなさい、戦場地帯のココノール湖のあたりでは、昔から白骨を拾い収める人もなく、戦死したばかりの亡霊は、もだえ恨み、古い亡霊は、泣きさけび、空がくもり、雨にしめる時、亡霊の恨み泣く声が、悲しく聞こえてくるのを。
<End Translation>